神田 ぼたん

東京神田の鳥すきやきの店、ぼたん。
創業明治37年の老舗です。

昭和4年に母家を構え、その独特の風情は外国人にも人気のお店。
ここの鳥すきやきの味は流石、上品にそしてしっかり味つけされた風味は、日本酒の燗に良く合う。

燗酒の銘柄を尋ねてみると、ある灘の名門の老舗酒蔵であった。
長い年月、お互いが信頼を重ねてこられたのであろう。
久しく会っていない蔵元の顔が浮かび、口元も緩む。

備長炭も上等のものを使っている。

東京に住む方であれば、行かれた方も多いだろう。
いつも変わらぬ庶民の味、残したい名店である。
外観鳥すきやき。仲居さんが世話をしてくれる備長炭は上等のものを使っている

山玄茶(さんげんちゃ)

祇園の様子祇園の様子

桜が満開の京都・祇園は、まさに「艶」という言葉がしっくりきます。
夜の主役は桜花とばかりに、この日ばかりは舞妓さんも控えめに見えてしまう。

京都・祇園に山玄茶(さんげんちゃ)という日本料理店があります。
店先
ミシュランで星を獲得されたそうですしらす茶づけ
かつて滋賀県の招福楼で腕を振るった店主が、真骨頂を披露します。

この店の締めに戴くのは、上等の銀シャリ。
店主の実家で栽培する金ひかりは、食味が良く、昔田舎のおばあちゃんが作ってくれた、竃で炊いたご飯のおにぎりを思い出します。

しらす茶漬けは何杯たべてもお替りしたくなるほどのもの。
そして、最後に塩とおこげをアテに、また日本酒をいただく。

帰り際、店主から翌日の朝食べて欲しいと小さなおにぎりを土産でいただいた。

すると翌日、店主の言われる通り、ご飯のいい香りが辺りに漂ったのでした。

ご飯

 

Matsuri

マリタイムホテルのB1にMatsuriはあります入り口京都の方がデザインに入っておられます
ニューヨークのマリタイムホテルのB1にMatsuriというセレブ達が集う高級和食店があります。
300席以上の大型店ではありますが、Megu やBudda barと並び、それを受け入れるだけの品格を保てるのはニューヨークの建築デザインの技でしょうか。

実はこのMatsuriには山口酒造場のグッズが店内各所にディスプレイされてあり、かつてある雑誌社から、山口酒造場が経営しているのならMatsuriの取材をさせて欲しいと問合せがあったほど。(実際はマリタイムホテルの経営です)

例えば…

コモ樽(暗いのですが、入り口正面の様子)
まずは、入り口から入ると、Darumaのコモ樽が出迎えてくれ

陶器の4斗樽は花器として活躍しています
約30坪ほどもあるウェイティングバーには、庭のうぐいすの陶器樽が花器として使われ

ディスプレイカウンター上の壁カウンター
メインフロアーには、壁一面にNiwano uguisu Darumaの一升瓶がデザイン風にずらーと並んでいます。

main floor先日、2年ぶりに訪れてみると、相変わらずのお洒落な店内に多くのニューヨーカーが上手にお箸を使いながら、肴と日本酒を粋に食べていました。

食材は素材重視でアメリカで手に入らないものは、日本から全て空輸しているそうです。小野シェフの料理には、根強いファンがしっかりおり、ここの料理は確かに美味しい。

ところで、日本のモノは色っぽいと思いませんか?
照明、器、壁や日用品まで、細部に工夫がしてあり、いちいち手が込んでいる。
全体を見渡せば、相当大胆なデザインをしても、決して下品にはならない。
この店に行くと、必ず日本の良さにもう一度気づき、改めて日本のファンになるはずです。

磯路

玄関

炉辺焼き風の居酒屋の中に入ると、品の良い白髪の女将が笑顔で出迎えてくれ、厨房の中では、ご主人が慣れた手つきで愛情たっぷりの料理をつくっておられます。

このお店の名前は福岡市平尾にある「磯路」。
真剣、実直、真摯、純粋、真心、愛情…
こんな夫婦で経営されているお店は今年で30年を迎えました。

新鮮な素材新鮮な素材

安全で新鮮な素材にこだわり、そして、ご主人がシンプルな味付けの料理を作ってくれます。

実はこの二人、今年ある雑誌で、「日本一、仲の良い夫婦」として全国に紹介されました。
これからも、おいしい料理を食べさせていただきたいお店でした。

だるま純米酒がキープできます

季節料理 かずしま

第1次地酒ブーム…昭和50年代、少数の酒販店の努力により、地方の名もない酒蔵の日本酒が発掘され、銘柄が大都市に紹介されたところその美味しさに火がつき一大ブームを巻き起こした。

高度経済成長の余韻が残っている頃、蔵元は勉強会と称して全国からしょっちゅう集まっては、酒について話し合い、膝を突き合わせて夢を語り合った。山口酒造場も全国を歩き回り、各地の酒つくりを勉強し、また友人の蔵元が筑後を訪ねてくれば当地の旨い酒と肴で朝まで語り合う…

かずしま女将不思議と全国には、今でも「蔵元が集まる店」が点々とある。
そして、九州で蔵元が集まるとき、必ずといっていいほどその舞台になったのが、久留米市にある「季節料理 かずしま」であった。

小さなお店であるが、美味しいお酒の取り揃えと、いかにもお酒が美味しくなるような肴の組み合わせに、全国から集まった蔵元は舌鼓を打つ……何十回と繰り返された光景であった。

しかし、残念なことに名店「かずしま」は先月閉店になった。かずしま女将の一人娘がご結婚されたのがきっかけらしいが、「*筑後四場」という言葉はここから生まれたらしく、逸話が多く残る名店の暖簾が降りてしまうのは誠に残念。
また一つ時代が終わった気がした。

全国に名をとどろかせたかずしまでした
*筑後4場とは、昭和60年代に美味しい純米酒造りを目指した筑後の酒蔵4社を指す。
有名な「越後vs筑後」のイベントでは、新潟の有名銘柄と筑後の無名銘柄をブラインドできき酒したところ、上位を筑後勢が独占し新聞や雑誌が書き立てたこともあり、話題になった。
三井の寿(大刀洗町)、杜の蔵(久留米市三潴町)、旭菊(久留米市三潴町)、庭のうぐいす(久留米市北野町) がその銘柄。

 

蕎麦

年末が近づいてくると、年越し蕎麦のことを考えます。

まったく個人的な話で申し訳ないのですが、私は蕎麦が大好きで出張に出かける度、地方の名店といわれる蕎麦屋さんを訪問することにしています。美味しいと思ったら必ず翌年も訪問します、出来れば季節を変えて。

そば粉には地方の特色があり、また、打ち手によっても随分違うので面白いものです。

田舎蕎麦。今回も香りと食感がすばらしいと思いました。

九州はうどん文化なので旨い蕎麦屋は少ないといわれるらしいのですが、福岡県北九州市に「芭蕉庵」という蕎麦屋さんがあります。

知人から聞いたところによると芭蕉庵さんは、そば粉の産地や保存方法に凝り、自家製粉に懲り、生粉打ちに凝り、凝れば凝るほど営業時間と睡眠時間が短くなっていくという、まさしく山口酒造場のテーマ「nipponのこころ」を地でいく店。

私の浅い経験ですが、ここは日本で一番という気もするのです。
(但し、私が複数年に亘り最低5食以上食べた一握りの蕎麦屋さんの中では…の話です)

 蕎麦の香りはいつ行っても素晴らしく、麺線はきれいにそろっており、生粉打ち(そば粉100%)とは思えないコシと長さ、そして、なによりもモチモチとした食感、甘くも辛くもない旨い出汁、上等なワサビ、別製の蕎麦湯、…
こんな蕎麦が多めに盛ってある「せいろ」が700円とは、芭蕉庵・藤本さんの店柄・人柄がにじみ出ています。

田舎蕎麦

三年前、山口酒造場の蔵開きで「手打ち蕎麦」を提供したことがありましたが、実はこのときの蕎麦は芭蕉庵の藤本さんとそのグループの方々にお越しいただき、蕎麦粉や道具持参で大変なご協力をいただいて実現したものでした。

「うまい、うまい」と皆さんによろこんでいただいて何よりでしたが、実はこんなプロの面々が裏方にいらしゃったのでした。

 

嵐山吉兆

離れにある蹲(つくばい)正面看板庭

晩秋の京都、京都嵐山にある吉兆本店を訪ねました。

吉兆は湯木貞一氏が1961年に創業した日本料理の最高峰として有名。
茶道に縁のない私には吉兆の本質を理解するのは難しいとは思いましたが、京都に明るいある紳士から誘われ、勉強の為の初訪問となりました。

吉兆専用の舟です。舟遊びの提灯

まずは吉兆専用の舟で、日本酒を戴きながら嵐山の紅葉狩りを楽しみます。「吉兆」という提灯がなんとも風情豊か。

舟を降り、いよいよ宴席のスタート。

焚き合わせうぐいすとまりも登場

料理はなるほど、八寸にたどりつくまで、鮑や海老、ぐじに鯛など、丁寧に仕事された料理が次から次に奉仕され、素材も器も見事なもの。焼き物、焚き合わせ、ご飯と続きます。

多満葉(左)さんと豆千鶴(右)さん

また当日は、祇園を代表する芸妓さんに花を添えていただき、晩秋の夜長を楽しめました。

私が驚いたことは二つありました。

一つは、乾杯の酒が梅酒だったこと。嬉しいような、残念なような。「吉兆」でも乾杯のお酒は日本酒ではないのかな? その後いただいた日本酒は伏見のお酒でしょうか、料理を邪魔せず美味しいものでした。

 二つめは、宴席が終わると帰り際に女将からお土産が渡されますが、そのお土産の熨斗紙を後ろで止めてあるセロテープが寸分違わずまっすぐに綺麗に貼ってあったこと。
このことを土産話として知人に話すと「吉兆まで出かけてセロテープに感動したの?」と失笑をかいましたが、私には、こんなところが響きました。

修行中の板場の若者

吉兆の「おもてなしの心」が修行中の若者にまできちんと行き届いているのでしょう。

豆千鶴さん(右)

今回、吉兆に来ていた芸妓さんは、祇園でトップを走り続ける豆千鶴さん、多満葉さんをはじめ、美声で有名な、だん佑さん、笛の福奈美さんなど、豪華なもの。豆千鶴さんは、来月カンヌで日本舞踊を披露します。皆さん大変、知性のある女性の方でした。

「芸妓さんは客に芸を見せているようで、実は見ている人を見ているのですよ」とは、お誘いいただいた某紳士の方。

京都は奥深く、とても短期滞在では入り口にも立てませんが、また来年伺いたいと思いました。

夜はまた別の趣きがあります

 

高山亀雄さん

「なんばしよんの?あんた久しぶりね」
赤坂エクセルホテル東急の3Fにある「赤坂有薫」に高山亀雄さんという翁がおられます。
昭和27年福岡県久留米市に今も営業している「鳥善」という有明海料理店を開き、今では東京を中心に九州郷土料理店を8店展開する「有薫酒蔵」の創業者。今年で93歳になりますが一日4合の日本酒は毎日欠かさず、今日もお店でお客と大好きな熱燗を飲み交わします。

高山亀雄さん亀雄さんは、全国で1等賞を2度も受賞した有名な柳川杜氏を叔父にもち、日本酒に対する愛情は半端なものではなく、毎回こちらが恐れ入るほど。亀雄さん自身も若かりし頃は倉男として働いたことがあるそうです。飲み方にもこだわりをお持ちで、先日訪ねた時にもいかに55℃の熱燗が美味しいか、温度計で正確に測った手製の熱燗を飲ませていただきました。確かに55度の熱燗は素晴らしく美味しかった。

だるま純米酒を55度にしてもらいました店内で焼酎を飲んでいる団体には、「自分がおごるけん…」とすすんで日本酒を振る舞い、お客に日本酒の美味しさを伝え続け、初めて会う人たちとも溶けあい、いつのまにやら店全体が一つになる、そんな不思議な魅力をお持ちのお方です。

亀雄さんは、決して驕ることなく人間味があり、その人生経験からくるのでしょうか、「今日はいい話を聞いた」と涙を流して帰られるお客さんも多いらしい。

地元久留米の老人ホームを毎年慰問し、うなぎ料理を振舞うことを45年も続けておられますが、今年も地元の新聞にでていたので尋ねると「喜んでもらうのは嬉しかけど、自分より年下の入所者ばかりで寂しか…」ともらしておられました。

現在、店の経営は長男の長男、幸一郎君に引きつがれていますが、やはり店には八重洲時代からの長年のお客さんが足しげくご来店されています。

とおちゃま高山亀雄さんの名刺の肩書きは「とおちゃま」と書かれています。
お店に入ってとおちゃまをよんでみてください。老若男女を問わず「あんた誰の?」という言葉から、楽しいお酒が始まるはずです。

 

 

錬(れん)

看板。マンションの一室です北島克正さんは福岡県古賀市の居酒屋「光太郎」や「柳亭」を経営されています。
「光太郎」や「柳亭」が名店たる所以は予約が一年待ちというからではなく、私は料理の質もさることながら北島さんの料理と日本酒の相性を見る眼力だと思っています。
料理毎に日本酒をマリアージュさせるセンスは日本一という某業界人もいらっしゃいました。 「日本酒が売れれば料理屋はもうからない」とは良く言われますが、北島さんはあえて日本酒を使い、食と日本酒の調和に挑戦する意気込みをお持ちです。 私自身も日本酒は間違いなく世界一の食中酒だと自負しております。

北島さん夫婦

北島さんは「光太郎」開店当初より、庭のうぐいすをずっと料理に合わせていただいていた、いわば当社の盟友ですが、先月「光太郎」を後身に譲り、新たに福岡市中央区に「錬」という飲食店をだされました。錬とは息子・光太郎さんの息子、つまりお孫さんの名前らしいのですが、並々ならぬ意気込みを感じました。

オープンの翌日、当社特約店の住吉酒販(福岡市博多区)の庄島社長からお誘いいただき、蔵元の数社と訪問、美味しい料理に一同舌鼓を打ちました。 さらに次のステージにいかれる感じのお店です。 夜でも4200円から食べられるとか。 美味しいお酒と料理をゆっくり食べたくなったら、お勧めのお店でした。

木賊(とくさ)

看板も当時のまま福岡市警固に小さな小料理屋があります。今年77歳になるママを慕い、福岡の著名人や財界人がこっそり通う名店。5-6人も入れば満席の店内は昭和46年創業のままで今日もママの粋な会話で店内は大盛あがり。 お客さんから店の名前の由来を尋ねられると「煮ても焼いても食えんけんたい!」とお決まりの文句。 私がまだ20代の頃、知人から初めてここに連れてこられた時あまりの世界に圧倒され、いつかは私もこのお店で堂々と飲める粋なオジサンになりたいと思ったものでした。

77歳とは思えないつやつやのお肌です先日、久しぶりに店を訪ね日本酒のぬる燗を注文するとそっと当社の特別純米酒(黒ダルマ)を出してくれた。今はこの1種類しかお酒はおいていないのだとか。その理由をママに尋ねると「アンタが美味しそうに飲むけんたい!」 口は悪いけど何故か憎まれず、すべてのお客を気持ちよく帰してくれる、いつまでも続いてほしい名店である。

***お願い***
木賊はママが一人でやられています。もし訪問される場合は、お客さんとしてのマナーにはくれぐれもご注意・ご協力お願いします。