精米の話 あとがき

「理由はわからないけど、昔からこうしていた…」酒蔵でよく聞かれる言葉です。
古い職人や技術者もこのような言い回しをしますが、昔の人が理屈もわからずやっていたことは大体正しいようです。

精米はとても大切な作業だと「昔から」いわれていました。
昔、酒蔵には「精米杜氏」といわれる精米だけをする杜氏がいたほどです。

酒造りの道具(昭和初期)

本来杜氏とは、野球でいう監督のような存在で、オーナーでも選手でもない、酒造りの全てを指揮する最高責任者であり、もちろん一人だけしかいません。
たとえ蔵元と意見と違っても杜氏がある程度優先されるのです。それくらい酒造りにおいて杜氏とは別格の存在で、荒々しい職人たちも杜氏の言うことならばと素直に従ったものです。
良い蔵には必ず名杜氏がいたものです。

しかし、精米になると話は別だったのでしょう。杜氏からどんな指示をされても、精米杜氏は自分の精米理論を押し通したらしいのです。

精米とはとても奥深く、現代の技術をもってしても完璧な精米というのは難しいものです。米の品種はもちろん、その年の米の硬さや気温などの条件によって精米のやり方を変え、精米が終わると、「枯らし」といって、徐々に米を冷やし仕込に使えるように手入れしなくてはいけないのです(乾燥した水分をもとにもどす作業)。

精米によって、酒の仕上がりは随分ちがってくるものです。