仕込49号~濾過編~

「ろか」と読みます。

滓引き後、ほぼ透明になった日本酒を濾過をする機械に通します。
濾過をすることで、酒質が安定し味がペキッとしまったものになりますし見た目もテリやサエが良くなり、より清澄した酒になります。また、少量ながら日本酒発酵に関係ない一般細菌なども除去してくれのも濾過のお陰。

しかし一方、濾過をすることで、多少なりとも搾った酒の味が変わるのも事実。
「当蔵では濾過を絶対にしません」と売りにしている蔵元もいらっしゃる程。

山口酒造場の考え方は…
安全醸造の為、品質向上の為に濾過は必ず行う。活性炭は少量使用する。

当社を昔から知っている方は意外に感じられるかもしれませんが、今年平成19年醸造年度からこのように変更しました。

(つづく)

仕込49号~滓引き編~

搾ったばかりの日本酒はすこし濁っているので、これを透明の酒に仕上げていかなくてはいけません。
一度に手入れできればいいのですが、滓引き→ろ過の2段構えでいきます。

まずは、滓引き。
搾ったばかりの日本酒を冷やしておくと、数日で滓が下がり、タンクのそこに濁った部分が沈殿します。この上澄みだけを分離することを滓引きを言います。(2度行う場合は、一引き、二引きといいます)。残った滓は、別に集めておき、ある程度溜まって滓だけを搾る場合もあります。

この沈殿している部分は、ヤブタの布を潜り抜けてきた米のカスのようなもの。

その他に、新酒の中には、次のような物質がいっぱい入っています。
米のデンプン…酵母のエサになるもの
酵母…弱っているとはいえまだ沢山生きています
酵素…麹菌が出したもの。生き物ではありません。デンプンなどを分解します
炭酸ガス…酵母の吐き出した息
細菌類…いろんな菌がいますが、アルコールの中では数が増えません。だからお酒は腐らないのです。(お酒を飲んで食中毒やお腹を壊した人などはいません) 国際的にもアルコールと食品は別の扱いをされています。

(つづく)
 

仕込49号~滓引き編~

「おりびき」と読みます。
お酒を搾り終わるとモロミがなくなり、職人たちは温度管理や分析などの仕事から解放されるので一段落しますが、腕の良いと言われる杜氏ほど搾ってからの手入れこそが大切だと言います。

人間にたとえると、「搾る」ことは「子供を生むこと」に似ており、いろんな条件が整い、聖なる命が誕生したのが新酒です。確かに原料米や酵母の種類によってある程度の特徴を持って生まれてきますが、これからの育て方を間違うとすぐにお酒がダメになります。

むしろ人間よりもシビアなのは、一度ダメになった日本酒は、二度と良い酒には戻りません。味を「ごまかす」ことは出来ても、「更正」することは出来ないと思っています。「親が居ずとも子は育つ」のは人間界の話、日本酒の場合、生んだあとのほったらかしはダメなのです。少なくとも火入れまでは真剣勝負が続きます。

(つづく)

 

仕込49号~上槽編~

1本の仕込タンクを半日かけて搾りますが、段階によって次の3つに区分されます。

①荒走り
しぼり始めて最初にでてくる、すこしにごった荒々しい部分。
昔は神事に使われた神聖なものでした。(布の目がつまって次第に透明な液体がでてきます)

現代は布も進化しましたので、実際にはそこまでにごった酒は出ませんが、炭酸ガスを含んだ荒々しい酒質は珍しいもの。年末くらいからお店で「荒走り」などと書かれた酒が並びます。

責め

②中取り(別名 中汲み(なかぐみ) など)
うすくにごった荒走りから、透明な中取りになります。
中取りとはその発酵タンクの一番美味しいところ。あまり加圧されず、米のうまみ、柔らかさが味わえます。私も初めて中汲みを飲んだとき、前や後の部分と味が明らかに違うことに驚かされた経験があります。日本酒とはそんなに繊細なものなのです。

中取りはとても贅沢な部分ですが、荒走りや、次に紹介する「責め」をどのように商品にしていくのか、蔵によって考えはさまざまです。山口酒造場では、中取りを特別扱いせずに、発酵タンク毎に商品にしていくことを基本としています。

③責め
最後に、圧力を上げて「ギューッ」としぼる部分を、文字通り「責め」といいます。
苦味・雑味が多い部分なので、あまり欲張らずに搾り過ぎないことも重要。最近の酒かすが柔らかいのは、昔と比べてあまり「責め」を欲張らず早めに搾るのをやめてしますのが一因でしょう。

(つづく)

仕込49号~上槽編~

仕込49号は21日目に搾りました。

樋の口の様子

日本酒の搾り方には、おおきくわけて3つの搾り方があります。
①しずくしぼり(別名 袋吊り、首吊り、など)
②ヤブタしぼり
③木槽(きふね)しぼり

それぞれに良いところがありますが、共通するところは日本酒は「布」を使って搾るということです。 この3つの搾り方の違いを説明するととても詳しくなりすぎるので今回は省略します。

仕込49号は②ヤブタしぼりでしぼりました。
ヤブタとは機械メーカーの名前ですが、現在はお酒を搾る機械の代名詞としても使われています。

写真は、しぼってすぐの「荒走り」の様子。

(つづく)

仕込49号~上槽編~

日本酒の定義は「お米を原料に発酵させてこしたもの」です。
「こす」というのがポイントですが、お酒を「こす」ことを「上槽(じょうそう)する」とも「しぼる」とも言います。
モロミを搾らないと日本酒とはいいません。

ちなみに、日本酒を粗くこしたものが「にごり酒」、全くこさないものを「どぶろく」といいます。
どぶろくは「日本酒」ではないのです(味は同じでも、こすかこさないかの違いで呼び方が変わります)
(つづく)

仕込49号~発酵編 21日目~

表面に浮いてくる泡がほとんどなくなればモロミが完全に発酵した証拠です。
現在アルコール分は17度、日本酒度は+5まで切れました。
やや辛口といったところでしょうか。

表面はすこしべたついた感じがします。

ここまで発酵が進めば上槽(お酒をしぼること)することになります。
モトのところでも紹介したように、元気がよすぎるモロミを「おさえておさえて…」と発酵させた結果、ようやく21日まで持った。という感じです。

あと、2~3日モロミを延ばしたかったとは杜氏談ですが、経過を見てみると、なかなか良さそうな感じです。

(つづく)

仕込49号~発酵編 19日目~

発酵もいよいよ大詰めです。

現在アルコールは約17度。
酵母とは不思議な生き物で、自分が出したアルコールによってストレスを感じ死滅してしまいます。
仕込49号の場合「きょうかい7号」という酵母を使用しています。
この7号酵母の場合は、アルコール耐性が強いといっても、凡そアルコール18度くらいが限界でしょう。
アルコール分が17度を超えてくると次第に元気がなくなり、除々に死滅していきます。

少し細かい話になりますが、日本酒モロミの中で「アミノ酸」という値を計測ますが、このアミノ酸の値が急に増えてくると、酵母が弱ってきたんだなと考えてほぼ間違いありません。

(つづく)

仕込49号~発酵編 16日目~

ステンレスの棒は分析用に検体を採取するための道具

発酵が進むにつれ、だんだんモロミの「甘み」がすくなくなってきました。
口に含んでみても、柔らかい香味のなかに、すこしアルコールが立ったような感じがします。

現在アルコールが16.1度
日本酒度が-3

搾るまであと一週間程度というところでしょうか。
仕込49号の場合、日本酒度がゼロを通り過ぎて、+3~+5程度になれば完全に発酵したことになると杜氏は考えています。

(つづく)

仕込49号~発酵編 12日目~

耳を近づけると、「シュワシュワー」と静かな音をたてて発酵しています。

酵母という生き物が呼吸して、この炭酸ガス(二酸化炭素)を出しているのですが、この辺りはまったく人間と同じですね。

ボーメという甘さを測る単位は、3を切ると皆様になじみ深い「日本酒度」という指標にかわります。
日本酒度が+1より+5の方が辛口… なんて、飲み屋さんのメニューでよくみかけます。

12日目

6日目  ボーメ4
7日目  ボーメ3.2
8日目  日本酒度ー29(ボーメに直すと2.9)
9日目  日本酒度ー24( 〃   2.4)
10日目 日本酒度ー19
11日目 日本酒度ー15
12日目 日本酒度ー11

このようにモロミでは徐々に日本酒度がプラス方向に切れていくのですが、このころになると発酵も最盛期でアルコール分は15度近辺もあり、みなさんが飲む日本酒くらいの度数は既に出ています。

一方、麹はいまだに活発に働いており、一見「甘さ」がなくなっているように見えるのですが、これは「糖化」よりも「発酵」が勝っているからで、「麹による糖化」と「酵母による発酵」が力比べをしているようです。

杜氏はこの様子を五感をつかって想像し、分析し、冷静に温度操作を行っていきます。
日本人は江戸時代からこんなことを行っているのです。

(つづく)