仕込49号~発酵編 8日目~

8日目

杜氏は、モロミの表面の状態を見て、いい発酵をしているのかどうか判断します。
発酵が強すぎるときは、表面がなんとなく荒々しくぼこぼこした感じがあり、逆に発酵が弱いときは、表面がベターとして油っぽい感じがするものです。

また、特に発酵の状態がいい時は大きな泡がぼっこり出てくることがあります。
玉泡(たまあわ)といいますが、ここ数日、仕込み49号タンクでよく見かけます。

大きいときは直径30cmくらいにもなるのですが、これは典型的な良い発酵をしている証拠。
玉泡が出たときは、杜氏も笑顔が出るものです。

現在アルコール度
ボーメ

(つづく)

仕込49号~発酵編 7日目~

5日目6日目7日目 
<順に5日目、6日目、7日目>
モロミも7日目になりました。

今の次期が、モロミが一番「甘い」時期で、ボーメが5.2という値です。
ボーメとは、フランス人のボーメさんが考え出した甘さを表す単位。
日本酒では「ボーメ」で甘さの度合を言い表します。
酒蔵では「あのタンク、ボーメいくつになった?」などと、よく話しています。

今から日が経つにつれ、次第にボーメが減っていきます。
これは、酵母が糖分をエサにして生きていくから。
日本酒は発酵するにつれ、だんだん「辛くなっていく」のです。

アルコール分は10.8度です。
「たなから」は「きょうかい7号」という酵母を使っていますが、7号はアルコール分18度くらいまで発酵する生き物です。香りがよく、味がしっかりしているのが特徴。発酵力(人間でいうところの生命力みたいなもの)は強い方でしょう。

(つづく)

仕込49号~発酵編 4日目~

4日目

3日目、4日目と順調です。すこし泡が目立つようになってきました。

毎日1度弱つづ温度を上げていき、7日目に温度を14度くらいにもっていいくつもりです。
発酵が元気すぎるからといって今の時期に、急に冷やすなどの「イジメ」をしすぎると、酵母がへそをまげて一気に元気がなくなったりします。 今の時期は、まるで子供を自由にのびのび遊ばせている感じ。

今はあまり慌てず、大胆かつ慎重な作業が求められます。

(つづく)

仕込49号~発酵編 2日目~

2日目
今日は2日目。大きな変化はありませんが、昨日よりすこし表面の泡が出てきた感じ。

モロミの中では、糖化と発酵が同時に起こっています。
このことを並行複発酵(へいこうふくはっこう)といいますが、日本酒の最大の特徴でもあります。

つまり、日本酒のモロミの中では、「甘くなること(糖化)」と「甘さがなくなること(発酵)」が同時におきているのです。ちなみに、ビールやウイスキーなどは、いちど全てを甘くして(糖化)、そのあと甘くなくなるのですが(発酵)…。

並行複発酵は、日本酒造りが複雑で難しいといういわれる所以でもあるのです。繊細な味や香りもこのことに由来します。

(つづく)

仕込49号~発酵編 1日目~

昨日、仕込が終わりましたので、今日がモロミ一日目ということになります。

約25日間で発酵が終了すると思いますが、仕込49号は元気が良すぎるので、少し早めに発酵が終わるかもしれません。発酵が早すぎると、味がのっぺりとして、ただ辛いだけの酒になる恐れがあるので、杜氏は、低温でゆっくり発酵させるような戦略をたてています。どれだけ味に「ふくらみ」をもたせることができるかが腕の見せ所でしょう。

一日目
<表面は固まり、米のフタができているように見えますが、中では着実に発酵が始まっています>

~発酵編~ではできるだけわかり易くモロミの中でおきていることを紹介していきます。

(つづく)

仕込49号~仕込編 留(4日目)~

~仕込編~4日目。
昨日の仲仕込に注ぎ足すように、最後の仕込、総米の約1/2を使うのですが、留仕込(とめじこみ)を行います。

留の仕込配合は…
米455kg
麹95kg
水820リットル
仕込温度は8度。

留2留1
<留仕込直後の表面>

今回は、一升瓶に換算すると約1500本のお酒を仕込むのに一本のタンクで仕込んだことになります。
使った米は、合計で1200kg(玄米では1800kg弱)。
その内、麹に使用した米が255kg(麹歩合 255/1200=21.25%)
麹歩合が高いほど、濃厚なお酒になる傾向があります。

また、使った水の量が1530リットル。
水歩合という計算式があり、今回は、1530リットル/1200kg=127.5%。
この水歩合が多いほど、酵母はよろこび元気に発酵しますが、エキス分がうすまり、「飲みやすい酒」になります。

このあたりは奥が深いので、このくらいにしておきます。
今まで、添→仲→留と三回の仕込を4日間で行いましたが、仕込はこれで終了です。
明日からは、モロミの発酵期間になります。
おおよそ、23から25日で上槽(お酒をしぼること)する予定です。

(つづく)

仕込49号~仕込編 仲(3日目)~

~仕込編~3日目。
十分に踊ったモロミに注ぎ足すように仲仕込を行います。

仲1
<仲仕込の後の状態>

今日は仲仕込なので、全体の2/6を使います。
今回の仕込配合は…
米300kg
麹80kg
水450リットル
仕込温度は9度。

日本酒仕込みでは、酵母が急激に薄くならないように徐々に仕込みの量を増やしていきます。

(つづく)

仲2

仕込49号~仕込編 踊り(2日目)~

~仕込編~2日目。
今日は「踊り」という日です。踊りとは、文字通りモロミの表面を「踊らせる」こと。酵母が働き、表面にプクプクと泡が筋状になって「踊り」始めます。
今日は仕込はなく、状態を「じっと待つ日」。

踊りの状貌

写真のように、モロミの表面にぶくぶくと泡が立ってきたので、酵母が順調に増殖している証拠。ここまで酵母が元気に働けば安心です。
むしろ、仕込49号は活発すぎるくらいで、朝からすこし温度を冷やしてあげて、「落ち着いて、落ち着いて…」と言い聞かせている程。競馬にたとえると、第一コーナー手前で減速させている感じ。このまま突っ走らせると最後にヘタってしまいそうです。

夕方には、親タンク(大きいタンク)に移し変えて、明日の仲仕込、明後日の留仕込に備えます。

今日は「じっとまつだけの日」ですが、一見なにもしないように見える今日が実は重要で、既に引退したある名杜氏は踊りの日だけは自らが蔵に泊まり、夜も何度か起きて手入れをしていた……こんな話を聞いたことがあります。

踊りには、「丁度いい加減」があるのです。

静かな緊張感が張り詰める踊りの日でした。

(つづく)
踊り2

仕込49号~仕込編 添(1日目)~

枯らしが終わった酒母酒母は、昨日3月2日に完成しました。
昨日は「枯らし」といって、一日間温度を冷やして「落ち着いて、落ち着いて…」となだめるように養生していました。まずまず、良い酒母に仕上がったと思います。

今日から、4日間、仕込が続きます。
仕込とは、米と麹と水を混ぜ合わせることを言います。
「米」とは、今日蒸す米のこと。「麹」とは今回は紹介しませんでしたが、2日間をかけてあらかじめ作っておきました。「水」とは、仕込に使う水のこと。

日本酒の仕込みは徐々に量を増やしていきますが、一日目を「添(そえ)仕込」二日目は「踊り(おどり)」という何もしない日、三日目の「仲(なか)仕込」、四日目の「留(とめ)仕込」と続きます。

この、添→仲→留と3段にわけて仕込むのが、日本酒の特徴。ちなみに焼酎は1段が一般的。

例えば、600kgの米を使って仕込むとすれば、添は100kg、仲は200kg、留は300kgを使用するのが原則です。 

今日は添え仕込なので、全体の1/6を使います。
仕込配合は…
米150kg
麹60kg
水210リットル

仕込温度は12度が目標。
小さな容器で仕込みます。

(つづく)

仕込49号~酒母編~

高泡1拡大
酒母5日目。高泡時期といいます。
りんごの様な爽やかなフルーツ系の香りが漂い、酵母が増殖中です。
酸味も心地よい味です。きき酒をすると甘酸っぱい感じ。

酒母をみれば将来の発酵の様子がだいたいわかります。

酒母の時に、元気な発酵をするときは、モロミに移行しても醗酵力は強いものです。逆に、元気のない酒母はその後もなんとなく元気のない感じで発酵しますので、暖めるなどの手入れが必要になってきます。

腕の良い杜氏は、この酒母の様子をみて、その後の麹の作り方や米の蒸し方などを調整していきます。

仕込49号は、酒母での酵母増殖力が強いので、力強い発酵をするでしょう。