全国新酒鑑評会について

kome.JPG 全国新酒鑑評会とは年に一度その年に造った酒の「全国大会」の位置づけであり、地方大会で金賞を受賞した蔵も全国審査で金賞をとると格別な喜びがあります。杜氏は今年は金賞がとれたとかとれなくて面目立たないとか一喜一憂します。

しかしこの全国新酒鑑評会については、功罪があると考えます。「功」については、出品をすることで明らかに蔵の技術レベルがあがる事。杜氏や蔵元は真剣に醗酵学を勉強し、酒造りに関しての知識を貪欲に吸収します。また「金賞」ととるために、蔵同士の交流も盛んになりますし、商売にも多少なりともプラスになる部分があります。

しかし、「罪」についても特質すべきことがいくつかあります。一点目は、結果として「燗」でのむ日本酒がわすれられてしまったということです。出品酒が冷やでのまれる大吟醸であるため、あたかも最高の酒が冷やで飲む大吟醸ということになってしまったこと(初めから想定はしてなかった筈ですが)。冷酒を西洋のガラスで飲む文化が最高と位置づけれれ、陶器や磁器でのむあたたかみのある日本酒は置いていかれてしまいました。そろそろ鑑評会も市販酒で行う時期がきているのかもしれません。

 二点目は、「鑑評会」が「品評会」になっていることです。、この鑑評会の本来の目的は、技術者がまだ完成していないお酒を春の時期に「鑑みて」火入れの時期や秋までの貯蔵の方法などを検討した真剣な場所であったらしい。当初は審査は生酒で行われていたが、なんらかの理由で審査、一般公開の時期が5月までずれこみやむなく火入れで審査をすることになったのだとか。現在は、将来を見据えた鑑評会ではなく、今の状態を品評する「品評会」になってしまっており、すでに飲みやすく完成された酒が「金賞」になるという本来の趣旨からはなれた会になってしまってます。搾った瞬間が一番うまいという酒造りも、それはそれで難しさがあると思いますが、やはり、ワインでいうとボジョレーヌーボーに味のピークをもってくる造り方よりも、「熟成」という考え方をして、例えばひと夏おいてうまさ・やわらかさを引き出した日本酒造りの技術研鑽の場とするという事を一方では考えていくべきだと考えます。そのためには、権威ある鑑評会が、「品評会」になってしまっていることを少し残念に思います。
 
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三点目は香り。華やかな吟醸香は大吟醸の醍醐味ではありますが、明らかに度を過ぎたとても飲み込めない大吟醸が「金賞」を受賞しているケースもあり、この事に関してもすこし疑問に感じます。日本酒の最大の特徴(強み)は食中酒として優れている事だと思います。日本酒には1200もの味・香りの成分があり、類希なる醸造酒です。食中酒にならない酒だけを権威ある機関が一大イベントにしてしまい、メーカーがそれに必死になっている姿、改める時期も近いのかもしれません。

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