秋洗い

秋洗いを始めました。秋洗いとは今の時期に(一般的には9月ですが)酒蔵を文字通り洗うように大掃除すること。春先に仕込みが終わると蔵を掃除して一旦蔵を閉めるのですが冬の酒造時期に備え今の時期に道具類を全て磨き上げ異常があれば修理するという昔から続く酒蔵の習慣です。

 当社では最近は8月に秋洗いをするのですが、本来ならは9月の終わり頃でしょうか、夜がひんやりとしてきた時期に、道具類を手入れするのと同時に蔵の柱や梁に「柿渋」を塗ります。この時強烈な臭さが蔵中に漂うのですが、この匂いは次第に薄れていき、なくなるといよいよ酒造りスタートの合図になります。余談ですが、柿渋は不思議なものであれほど臭いのに酒に匂いが移らないばかりではなく、昔は酒の中に入れてオリ下げなどの濾過処理をしていました。(木材の道具に柿渋を塗って手入れをしますが、これは柿渋は防カビ効果がある為。)

 このように秋洗いでは蔵を掃除して乾かす意味合いがありますが、当社ではもうひとつ大切な意味があります。それは、今年の酒造りを一緒に頑張る職人たちの初顔合わせになるのです。昭和の中ごろ前までは、出稼ぎとして農村や漁村から酒蔵にやってきて、半年間一歩も蔵から出ずに酒造りに取組んだものでした。秋洗いはそんな職人たちの今年の初顔合わせ・初仕事になる訳です。

これからも大切にしていきたい酒蔵の習慣でした。