晩秋の京都、京都嵐山にある吉兆本店を訪ねました。
吉兆は湯木貞一氏が1961年に創業した日本料理の最高峰として有名。
茶道に縁のない私には吉兆の本質を理解するのは難しいとは思いましたが、京都に明るいある紳士から誘われ、勉強の為の初訪問となりました。
まずは吉兆専用の舟で、日本酒を戴きながら嵐山の紅葉狩りを楽しみます。「吉兆」という提灯がなんとも風情豊か。
舟を降り、いよいよ宴席のスタート。
料理はなるほど、八寸にたどりつくまで、鮑や海老、ぐじに鯛など、丁寧に仕事された料理が次から次に奉仕され、素材も器も見事なもの。焼き物、焚き合わせ、ご飯と続きます。
また当日は、祇園を代表する芸妓さんに花を添えていただき、晩秋の夜長を楽しめました。
私が驚いたことは二つありました。
一つは、乾杯の酒が梅酒だったこと。嬉しいような、残念なような。「吉兆」でも乾杯のお酒は日本酒ではないのかな? その後いただいた日本酒は伏見のお酒でしょうか、料理を邪魔せず美味しいものでした。
二つめは、宴席が終わると帰り際に女将からお土産が渡されますが、そのお土産の熨斗紙を後ろで止めてあるセロテープが寸分違わずまっすぐに綺麗に貼ってあったこと。
このことを土産話として知人に話すと「吉兆まで出かけてセロテープに感動したの?」と失笑をかいましたが、私には、こんなところが響きました。
吉兆の「おもてなしの心」が修行中の若者にまできちんと行き届いているのでしょう。
今回、吉兆に来ていた芸妓さんは、祇園でトップを走り続ける豆千鶴さん、多満葉さんをはじめ、美声で有名な、だん佑さん、笛の福奈美さんなど、豪華なもの。豆千鶴さんは、来月カンヌで日本舞踊を披露します。皆さん大変、知性のある女性の方でした。
「芸妓さんは客に芸を見せているようで、実は見ている人を見ているのですよ」とは、お誘いいただいた某紳士の方。
京都は奥深く、とても短期滞在では入り口にも立てませんが、また来年伺いたいと思いました。